ファン人気もバルサがレアルを圧倒!? スペインの人気調査がついに逆転。

先日、「リーガをより楽しむために役立つデータ」が公表されたので紹介したい。

 スペインのスポーツ紙ASがマーケット調査のイケルフェル社に依頼した人気調査アンケートの結果である。イケルフェルは第4節から第6節まで1部で使用されている20のスタジアムに赴き、それぞれ70人、計1400人に回答を求めた。問いは幾つかあったが、注目すべきは断然これだ。

――自分が応援しているチーム(即ちアンケートが行なわれたスタジアムのホームチーム)を除いて、好きなチームと嫌いなチームを順に3つずつ挙げて下さい。

 スペインでは昔からバルセロナレアル・マドリーが様々な側面で覇権を争ってきた。それ故ほとんどのサッカーファンが「自分にとって第2のチーム」としていずれかを応援している。つまり、この問いではバルサとマドリーのどちらが全国的に支持されているのかわかるのだ。

■かつては絶対的な人気を誇っていたマドリーだが……。

 2002年にカタルーニャ州政府が州単位で行なった人気調査では、マドリーが全17州中8つの州で人気ナンバーワンとなった。得票率は全サンプルの38%だった。バルサは2位ながら18%、州別では地元カタルーニャしか押さえられず、大きく水をあけられた。ちなみに3位はアトレティコ・マドリーだったが、得票率はわずか5%である。

 その後、'07年5月にもスペイン内閣官房に従属する社会学調査センターがアンケートを行ない、国内の人気ナンバーワンがマドリーであることを再び証明した。全国で18歳以上の男女2473人に「サッカーが好きか」と問い、イエスと答えた66.8%に好きなチームを挙げてもらったところ、回答者の32.8%がマドリーを支持したのだ。またもや苦汁を嘗めたバルサは25.7%の2位。3位はアスレティック・ビルバオで一桁少ない5.1%だった。

 さて、そこで今回の結果である。

 果たしてFIFA認定「20世紀最高のクラブ」マドリーはタイトルを防衛するのか。俺たちは今世紀も最高だとアピールするのか。それとも、ここ数年のタイトルレース同様、バルサがまくるのか。

「好きなチームを3つ挙げよ」という問いに対する全回答(1400人×3チーム=4200チーム)を集計したところ、勝者は44%を占めたバルサであった。37%で屈辱の首位転落を味わったマドリーには、「嫌いなチーム」で最多の51%というダメ押しも待っていた。

カタルーニャ文化圏では政治的理由で“親バルサ”に。

 今回のアンケートが面白かったのは、どのチームのファンがバルサを好み、マドリーを支持しているのかわかった点だ。

“親バルサかつ反マドリー”の傾向は、バスク地方アスレティックレアル・ソシエダオサスナで強かった。一番の理由は政治的なものだろう。事実、以前レアル・ソシエダを取材した際、クラブの広報に「うちは、バルサは好きだ」と言われたことがある。マドリー戦の最中、スタンドから湧き起こるバルサコールを耳にしたこともある。

 またスポルティング・ヒホンも反マドリーのバルサ派だ。こちらは'80年代のキニ、'90年代後半のルイス・エンリケ、現在のビジャと、出身選手がバルサで大活躍してきた歴史があるから。まずマドリーに移籍し、その後バルサに入ったルイス・エンリケは、マドリーを毛嫌いしてきた。その辺りもファンの心情に影響を及ぼしているかもしれない。

 その他バルサを支持しているのは、同じカタルーニャ文化圏に属するマジョルカ。反マドリーという立場から、バレンシアアトレティコビジャレアルサラゴサのファンの中にもバルサを好む人は多い。

■「敵の敵は味方」でマドリーを支持するファンも。

 逆に親マドリー派が多いのは、'02年のアンケート結果と同じ、アンダルシア州と地元マドリー州だった。前者ではベティス、セビージャ、グラナダのファンが、後者ではヘタフェとラージョのファンが、マドリーになびいている。ラシン、レバンテ、エスパニョールのファンにも支持者が多い。

 こちらの理由で最も強力なのは、スポルティングバルサの関係同様、「出身選手がマドリーで大成功したから」というものだろう。例えば、ラシンから出た選手には'50年代末の欧州5連覇に貢献したヘントや、'70年代から'80年代の終わりまで大活躍したサンティヤナがいる。ベティスからは'80年代にゴルディージョがやってきてファンの心を掴んだ。ラージョとの絆を作ったのは'50年代のベラスケスや、マドリーで歴史に名を刻んだ後ラージョでプレーしたウーゴ・サンチェスだ。

 また「同地区のライバルが反マドリー」というのも、マドリー側に付く立派な理由になっている。「敵の敵は味方」という考え方で、エスパニョールやレバンテはこれに当てはまる。一方で、ヘタフェは会長からしてマドリーのソシオなので、マドリー一派となるのは当然だ。

バルサとマドリーの人気は強さによって上下が変わる。

 バルサとマドリーの全国的な人気は相対的で、少なくともここ20年ばかりは、シーソーのように上下している。片方が上がれば、片方が下がるのだ。

 それを踏まえると、今回バルサの人気が高まったワケにはすぐに思い当たる。

 何より、強いから。そして魅力的な選手が揃っているから。

 全くの不人気だった'02年を振り返ると、弱いバルサを尻目に、マドリーはスターを集めて銀河系選抜を形成し始めていた。その後、一世を風靡したロナウジーニョバルサの地位を高めたため、'07年の調査では、両者の差が小さくなっていた。

 いまのバルサはどうかといえば、毎年トロフィーを掲げている。世界最高の選手メッシがいる。スペイン代表が選手・スタイルの両面でバルサ色に染まっている。カンテラの選手を大事にするところも一般的に好感がもたれている(ローカル色が極めて強いアスレティックの人気が高いのはそのせいだ)。

 反対に、マドリーの天下が終わったのは、優勝できないから。クリスティアーノ・ロナウドがいろいろな意味でメッシに負けているから。代表での影が薄いから。カンテラ育ちの選手を使わないから――。

 どれもコインの裏表だ。

■傲岸不遜なモウリーニョもマドリー人気低下の要因に。

 加えて、今回の調査に関しては、誰もが認める素晴らしいサッカーがバルサの人気を高めたと言えるだろう。バルサが真に全国区となったドリームチーム時代も、結果だけでなくプレースタイルが訴求力となっていた。

 もうひとつバルサに吹いた追い風の要因は、モウリーニョの存在である。

 傲慢と受け止められる彼の言動や振る舞いがグアルディオラの誠実さを引き立て、ひいてはバルサの印象を良化した。今回のアンケートで、「スペインサッカー史上最高の監督は?」に対する回答は、1位がグアルディオラとスペイン代表のデルボスケで25%。モウリーニョは5位で4%。「あなたが一番好きな監督は?」への回答でも1位はグアルディオラで38%。モウリーニョは2位ながら半分以下の14%である。

 チームを代表して毎週末マイクの前に座る監督の態度は、チームの印象を左右する。イメージの重要さを理解しているはずの企業家ペレス会長はいつまで黙っているだろうか。