傷だらけの覇権奪回=NZ、国民の夢かなえる―W杯ラグビー

約430万のニュージーランド国民の夢。黒く染まったスタンドが歓喜で揺れる。マコウ主将は声を張り上げた。「喜びは言葉にできない。もう疲れ果てた。でも全員が全てを出し切ったことを誇りに思う」と。
 息詰まる展開が続いた。点差はわずか1点。前半終盤のSOクルーデンの負傷交代で攻め手を失い、逆にフランスの猛攻を浴びた。しかし、倒れても倒れても立ち上がり、体を張って守った。そして迎えたノーサイド。右足のけがを押して奮闘したマコウはその瞬間、両手を突き上げた。
 世界ランク1位も大黒柱のSOカーターのほか、負傷離脱者が相次いだ。だが、クライストチャーチ地震のあった今年、地元開催の大会で負けるわけにはいかなった。
 第1回大会の優勝から実に24年。4年前は優勝候補筆頭と目されながら、準々決勝敗退に終わった。その反省を生かすため、前回大会から監督、主将をそのまま据え置き、主力の海外流出も抑え、強化に努めてきた。特に個々の身体能力向上に力を入れ、それが決勝の舞台で実を結んだ。
 アマチュアの時代だった24年前とは違う、プロの時代の優勝。真の世界王者と言えるだろう。「長い旅路だった」とヘンリー監督は言い、「最高だ。世界トップのチームがエリス杯(優勝杯)を取ったのだ」と感極まった。土壇場で底力を発揮し、ラグビー王国の威信を世界に示した。(オークランド時事)。