.ザック日本、5万人の殺気に17戦目初黒星…W杯アジア3次予選・北朝鮮戦

◆W杯アジア3次予選 北朝鮮1―0日本(15日・金日成スタジアム) ザック・ジャパンの不敗神話が完全アウェーの地で途切れた。すでに最終予選進出を決めている日本は後半5分に先制されると、その後は反撃の糸口を見つけられず0―1と敗戦。アルベルト・ザッケローニ監督(58)就任以来の連続無敗記録は16でストップした。会場の金日成スタジアムは5万人の観客が総立ちになり人文字も出る異様な光景。これで敵地での北朝鮮戦は通算2分け2敗となった。

 完敗だった。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、ザッケローニ監督は天を見上げて悔しそうな表情を浮かべた。スコアこそ0―1だが、チャンスの数やプレーの質はそれ以上の開きがあった。就任初戦のアルゼンチン戦以来403日目で喫した初黒星。「北朝鮮はこの試合に勝とうという気持ちで来ていた。そのレベルが日本とは違っていた。向こうは一生に一度の大事な試合だった」と敗因を分析した。

 22年ぶりの平壌での試合。一つも空席のない客席は異様な雰囲気が漂っていた。キックオフ1時間前にはバックスタンド全面に「勝て 朝鮮」という特大の人文字が登場。開始直後から観客が総立ちになり、メガホンや太鼓の音が鳴り響いた。日本選手が肩を組んで歌った君が代は、叫び声に邪魔されほとんど聞こえない。相手国の国歌斉唱を邪魔するという前代未聞のマナー違反だ。

 前半わずか9秒に最初のシュートを放たれると、終始受け身に回った。屈強な相手は警告寸前のタックルで突進し、何度もサイド攻撃を仕掛けられた。前半27分には指揮官自ら中村と長谷部を呼び、2人のポジションを入れ替えたが流れは変わらない。後半5分の失点シーンでは、DF駒野の背後からパク・ナムチョルがのしかかってきた。終了間際に時間稼ぎでこの日6枚目のイエローカードを受けてもお構いなし。指揮官は「彼ら(北朝鮮)の何とか勝利したいという気持ちが何枚ものイエローカードに表れた」と振り返った。

 ピッチ外でも苦闘した。14日に平壌入りした際には荷物検査など空港で4時間も足止めされ、持ち込もうとしたラーメンなどの食料品は没収。携帯電話やパソコンも持ち込めず、日本協会からは選手の散歩や買い物なども禁止された。わずか150人の日本人サポーターは開始15分前まで入場が許されず。鳴り物禁止のスタンドで、日の丸を振ることもできずに小さくなっていた。

 後半43分には長谷部―ハーフナー―李のコンビネーションで同点弾が決まったように見えたが、長谷部のパスがオフサイド。すでに3次予選敗退が決まっている北朝鮮のなりふり構わぬ戦いぶりに屈した。「これを教訓にして次につなげたい。最終予選はもっと厳しいと思う」と長谷部。想像以上に厳しかった“消化試合”は、ブラジルW杯への糧にする。

 ◆W杯アジア最終予選 12年6月3、8、12日、9月11日、10月16日、11月14日、13年3月26日、6月4、11、18日に実施予定。2組5チームずつで争われるため、毎節とも各組1チームずつが試合を行わない。シード順は12年3月以降に行われる抽選会時点のFIFAランクに基づいて決められる予定で、日本は3次予選で2位通過となっても第1シードとなる見込み。