【高校野球】いよいよセンバツ開幕。プロ注目の『高校ビッグ3』を見逃すな!

高校ビッグ3――大谷翔平花巻東)、濱田達郎(愛工大名電)、藤浪晋太郎大阪桐蔭)。今秋のドラフトで話題の中心となりそうな3投手が顔をそろえる第84回センバツ高校野球大会。それだけでも珍しいことだが、さらに今回は初戦から大谷と藤浪の直接対決が実現。注目度の高い開幕を迎える。

 万全の状態での投球を誰も見たことがないのに、これだけ騒がれる。それが大谷のすごさだ。昨夏の甲子園では左足に故障を抱え、ステップ幅を6.5歩から4.5歩に縮める “立ち投げ”ながら、150キロをマーク。どこも故障がなければ、どれだけのボールを投げるのか……想像するだけでワクワクさせてくれる。

 3人の中で、唯一、甲子園を経験しているのが大谷だからこそ、甲子園が持つ独特な雰囲気も知っている。

「(大会前に自分の)記事をたくさん書いてくれたことで、観に来てくださるお客さんも多くいるはず。球場にたくさん入ってくれるのは好都合。昨年の夏も花巻東を応援してくれる人は間違いなく多かったですし、自分たちにプラスになります」

 こういう思いがあるから、全力プレイだけでなく、それ以外の部分にも気を遣う。

「どういうピッチングをするかだけでなく、どういう立ち振る舞いをするのかも大事だと思います。応援されることを目的にやるわけじゃないですけど、そういうことも考えないと流れも来ないと思います。三振を取ったときも、審判から(ボールを)もらうときも、ひとつひとつの行動が見られていますし、実際、テレビにも映っているので、意識して真摯に行動していきたいと思います」

 幸い、左足の状態はいい。センバツ前の練習試合でも146キロをマークするなど、不安はない。ストレート以外にもカーブ、スライダー、チェンジアップ、フォークと多彩な変化球を操り、ストレートの調子が今ひとつでも配球を変えて対応できる幅がある。「ピッチャーの素質は能力だけじゃなくて、ピッチングで工夫できるか」と話す大谷。走者がいないときはどんな相手だろうと自分の投球を見失うことはない。

「一番の目標は個人のことよりも、岩手、東北初の優勝旗を持ってくること」

 先輩の菊池雄星(西武)同様、故郷に夢を届けるつもりだ。

 一方、愛工大名電・濱田のすごさは、ぶれない、動じない、慌てた姿を見たことがないことだ。

「マウンドでは何も考えてないです。負けたくないので、気合は入れているんですけどね」

 昨秋の明治神宮大会で打球が足に直撃するアクシデントがあったが、痛そうなそぶりは見せなかった。さらに5日間で4試合目の登板となった決勝では爪を割るアクシデントに見舞われたが、試合が終わるまで周囲に気付かせなかった。

「マウンドで喜怒哀楽を出したらピッチャーじゃない。ビビッて投げるのは、絶対に嫌なんですよ」

 もちろん、味方のエラーやミスに腹を立てることもない。

「自分基準の守備力で考えるんです。自分なら無理だから捕れなくてもしょうがない。追いついただけでもすごいなって。連続エラーが出たとしても、そこで抑えるのがエースだと思っています」

 イライラするどころか、むしろ見せ場と考えてワクワクする。だから、大量失点もないのだ。

 昨秋の愛知県大会は初戦(2回戦)の享栄戦で自らのベースカバー遅れによる内野安打1本だけの8回完封(コールド)。3回戦の安城学園(5回参考)、準々決勝の桜丘戦と2試合連続の無安打無得点を記録すると、準決勝の至学館戦も1安打完封。31回で2安打しか許さないという”別格”の投球を見せた。

 数少ない打たれた試合である名古屋地区の東邦戦では、ストレートにタイミングを合わせる相手打線を逆手にとり、球速を落としたストレートで料理。フォームのリズムも変えてタイミングを外した。神宮大会決勝の光星学院戦ではサイドスローも披露。たとえ本調子でなくても、豊富なバリエーションで打ち取る術を持っているのが強みだ。

 身長197センチ。規格外の大きさを誇るのが大阪桐蔭・藤浪だ。この長身から投げ下ろされる150キロのボールなど、高校生にとっては未知の領域。球威あるストレートとスライダーがはまると手がつけられない。

 だが、藤浪につきまとうのが“ここ一番”の弱さ。1年秋の近畿大会は6回途中1失点ながら加古川北に初戦敗戦。2年夏の大阪府大会決勝では東大阪大柏原に5点リードしながら7回途中4失点で降板し、チームも逆転負けを喫した。2年秋の近畿大会準々決勝の天理戦は7回12安打8失点でKO。投手としての能力や素質を結果に結びつけられずにきた印象が強い。大谷、濱田に比べると、「フォームも硬くて、ぎこちない」と本人は苦笑いするが、「躍動感と力感で勝負したい」と長所を生かすつもりだ。

 中学の泉北ボーイズ時代は日本代表としてAA世界選手権に出場。3人の中ではもっとも全国で名前の売れている選手だった。だからこそ、自分でも歯がゆさを感じている。この冬は常に力んで投げていたのを改善。ゆったりとしたフォームで投げられるよう取り組んできた。大谷との投げ合いになるセンバツ初戦で、どこまで“ゆったり感”を出せるか。大一番で平常心を貫けるようなら、手がつけられない投手になる。

 ビッグ3が新たな歴史を作るのか。もっとも成長する投手は誰なのか。興味はつきない。第84回センバツ高校野球大会は3月21日に開幕を迎える。