<都市対抗野球>完全試合・森内 震災ブランク超え快挙

仙台市JR東日本東北のエース森内が54年ぶりの完全試合を達成した。打者27人から12奪三振。柔らかな腕の振りから繰り出す140キロ前後の速球を軸に、緩急の利いた小気味良いテンポの投球が秀逸だった。

 チームは東日本大震災の影響で、約2カ月練習ができなかった。森内自身も、宮城県の沿岸部で、津波で不通になった路線の代行バスの案内に従事するなど、会社の復興活動に専念する日々が続いた。

 それでも、「ブランクなんて関係ない」と言い切るのが、エースたるゆえん。「皆が大変な時に、社員として、やるべきことをやっただけ」と、つらかったはずの日々を淡々と振り返る。

 だが、その言葉とは裏腹に、5月に練習を再開するや熱い情熱を傾けた。7月の都市対抗1次宮城予選はクラブチームとの初戦から登板。常にその投球で、練習不足の不安を抱えるチームを鼓舞し続けた。

 この日の八回、味方は、森内とともに無安打投球を続けていた横浜市三菱重工横浜の亀川を攻略し、エースの意気に応えた。

 勤務するJR東日本仙台支社はいまだ復旧半ばの路線があり、地元も復興の道半ばにある。大会用に新調した「みんなと共に がんばろう東北」のワッペンを胸に、54年ぶりの快挙で地元に熱いエールを送った。【藤倉聡子】