稀勢の里、32勝での昇進に異様な空気

大相撲九州場所で事実上、大関昇進を決めた関脇・稀勢の里(25)=鳴戸=が千秋楽から一夜明けた28日、福岡市の宿舎で会見を行った。悲願の大関取りを果たし、普通ならお祝いムード一色だが、短時間で会見を切り上げるなどピリピリムード。29日に予定されていた使者待ち会見も急きょ中止に。後援会関係者も32勝での昇進に戸惑いを見せるなど異様な空気が漂った。

 激動の15日間を終えた稀勢の里は「ホッとしている。疲れはいつも通りで、まだまだやれるという気持ちですね」と笑顔を見せた。7日に急死した故・鳴戸親方(元横綱隆の里)をしのび「いい結果が出なければ一番悲しむと思ってやりました」と悲壮な決意で挑んでいたことを明かした。

 悲願の大関取りを果たしたが、周囲には複雑な空気が流れている。ノルマに1勝足りない32勝での昇進に、後援会は「うれしいことだけど、千秋楽の取組前に決まって少し拍子抜けした部分もある」と戸惑いを見せる。この日の部屋での会見は開始15分で部屋関係者から終了の声がかかり、通常なら行われる使者待ち会見(29日)も「部屋での予定が入っている」との理由で急きょ中止に。伝達式前慣例行事の中止に二所ノ関広報部長(元関脇・金剛)は「協会としては強制することはできない」と語った。

 先場所の琴奨菊とは対象的だ。千秋楽翌日に地元・福岡で水上パレードが決まり、柳川市の市民栄誉賞も決定。稀勢の里の地元・牛久市では30日に市役所の屋上から垂れ幕を掲げることが決まっているが、今後の祝賀行事については「役員会を行ってからになります」と未定の状態だ。

 1勝の重みが思わぬところで浮き彫りに。稀勢の里は30日の伝達式の口上について「まだ考えてません」と話した。来場所、抜群の成績を挙げて見返すしかない。